お花と女友達 | 千秋オフィシャルブログ 苺同盟

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今、我が家のリビングにはひまわりが飾ってありますひまわり




わたしが芸能界に入るきっかけはフジテレビの「ゴールドラッシュ!」というオーディション番組でした。新番組でまだ何が行われるのか全くわからない状態で初代チャンピオンになりました。毎回1ヶ月に一度、優勝者が決まる方式でした。それから番組は数年続いたので累計二十数人のチャンピオンが集まり、みんなでレッスンをしていました。その頃出来た友達がA子さんです。

女優志望のA子はいい大学も出て頭はいいのですが少し変わっていて、友達が極端に少なく「頭のいい人しか友達いらないの。だから千秋とは友達になったの。他の人とは別に交わらなくてもいい」と、大勢で遊ぶ企画を立てるわたしの誘いにはほとんど来ず、わたしと2人で遊ぶ時だけ顔を出しました。わたしはなんだか褒められて嬉しいのもありましたが、友達を選ぶなんてあんまり良くないのでは?と思いました。が、そのことを信頼出来る大人の女性に尋ねると「わたしもそうよ。子どもの頃はそんなこと関係なく色んな人と関わった方がいいけど、大人になってからの友達は選べるのよ。自分にとってプラスになる友達だけと付き合ってきたわ。それはお互いにそう思えるギブアンドテイクでね。そうやって選んできたわ。だから少ないけど充実してる」とあっさり言われました。目から鱗でした。それが正しいかは別として、友達を選んでいいのか、と驚きました。小さい頃は「みんな平等に、誰とでも仲良く!友達100人できるかな?」なんて教えられてきたのに、大人になったらそれだけじゃないのか、と。
しかし大好きなA子も、その尊敬する大人の女性も、同じ意見だったので、さらにA子の考えに惹かれていきました。

そしてチャンピオン達は、次々にレッスンを卒業し、事務所にもらわれていきます。わたしは今の事務所へ、A子は別の事務所へ、みんなもそれぞれの事務所へ。
わたしはなぜか運良く、事務所に入る時点で「ウゴウゴルーガ」など、3つのレギュラーを持っていました。だけど事務所に入った途端に、お給料が所属前よりもずっと少なくなりました。不服でしたが、プロになるというのはそんなものかと、渋々受け入れました。
一方A子は、女優の仕事はまだ何もないけど、事務所から破格の扱いを受け、表参道の高級マンションを与えられました。遊びに行くと、広いワンルームに絨毯に家具付き、住人だけの専用ジムも付いています。遊びに来たみんなが家賃30万くらいだと言っていました。わたしは新人としてバラエティの無理難題にも頑張って働いているのにお給料も下がって実家暮らし。彼女は働いてなくても高級マンション暮らし。たまのオーディション以外は、ジムに行ったり勉強のために映画や舞台を観たり、そして表参道のフラワーショップでお花を買って部屋に飾ったりと、優雅な暮らしでした。当時も週に一回くらいは遊んでいたし、よく泊まっていたので、とにかく羨ましかったです。いいな、いいな。事務所によってこんなに待遇が違うのか、と思いました。

しかし一年半くらい経った頃。A子から突然の話が。「仕事してないから事務所を辞めさせられることになった。今月中にマンションも出て行けって」
えー。月末まであと2週間しかないのに、そんな突然!?仕事に関しては、A子だけの責任じゃないのに?なんかひどい、急過ぎる。そしてあと2週間で次の家を見つけて引っ越しなんて!
そこからA子の引越しを手伝いました。断捨離や、都心だと家具が高いので、郊外のホームセンターにも車で連れて行ったり運んだり。バタバタと日が過ぎ、部屋が片付いたらまた招待するから待ってて、と言われました。
そして1ヶ月くらいが経った頃、新居に遊びにいきました。A子はこの街が好きだからと同じ表参道に住んでいました。家賃は約6万円。その前から比べると随分と下がりました。部屋に入るのに絨毯敷きのオートロックではなく、こじんまりとした階段でした。広いワンルームではなく、細かい2DKでした。ただ、もともとセンスのあるA子らしく、狭くなっても居心地が良く、可愛いお部屋でした。そしてわたしはテーブルの上にあるお花に気がつきます。
「あれ、またお花が飾ってある」

豪華な生活をしていた頃、A子の部屋はいつも生花のいい匂いがしました。わたしにとって、お花は、お祝いの時に頂くもの、もしくは親がわざわざ買ってくるもの。すぐに枯れちゃうのに安くはないもの、つまり贅沢なものでした。A子が高級マンションで1週間ごとに生花を買ってくるのは、さすがその生活の証、という認識でした。
だけど、生活がガラッと変わった今も、そこにお花がありました。小さいけどお洒落な花瓶に、凛として。
「あ、そうなの。あのね、生活がガラッと変わっちゃったけど、それに合わせて心までみすぼらしくなりたくなくて。これまで通り、お花を週に一回は買って飾ろうと思ったの。前と同じお花屋さんだよ。小さいものなら500円くらいで売ってるし。それくらいの贅沢はこれからもしていこうって決めたの。見ると元気になるから」
って明るく話してくれたA子は、またわたしに大切なことを教えてくれたのでした。
その後に身に降りかかってくるであろう芸能界の浮き沈みにも耐えられるヒントをもらったのです。

お花屋さんを通る度に、A子を思い出します。実は今日もお花屋さんに寄って、それを思い出したから書いています。A子は•••普通に元気に生きてる。あれからしばらくして芸能界は潔くスパッと辞め、出版社やアパレルを経て、今は社長&有名な•••おっとここまで。A子に「間違ってもわたしが女優目指してたなんて言わないでよね」と釘を刺されているので。

頭が良くて可愛くて、そしていつまでも凛としているA子。今も友達です。あの頃と同じように、わたしに迷いがある時には連絡するとすぐに的確な答えが返ってくる、頼もしい女友達のひとり。相変わらず友達を選んでいるようなので、あらゆるわたしの誘いも9割は断ってきますが。
一方わたしは相変わらず、月一会だ、人狼だ、ゲームしよう、ピクニックしよう、海行こう、ハローサーカスだ、と企画しまくって自分の好きな人達を集めるのが好きなんだけど、好きなんだけど、友達作りとはまた違う気もします。
わたしも、"友達"とは必ず一対一で会います。楽しむための大勢と遊ぶのとは別物です。一対一でじっくり話してお互いを知って、信頼を深めていくのです。女同士でも両想いじゃないと成立しない。どっちか一方だけが会いたい会おう、じゃなかなか難しい。両方が会いたいから会う。人によってはしょっちゅう会う人、1年に数回の人、数年に一回の人•••そのタイミングが合致する人が心地いいです。

長くなった。
薄情に見えるわたしですけど、芸能界に入る前からずっと思っているのは「友達は財産です」
恋人と違って友達は永遠に続くんだもん。
そして量じゃなく質なんですね。
群れてばかりの学生時代には気が付かなかったよ。それは大人になってからやっとわかるようになりました。
どんな場所にも凛と咲くA子のおかげで。